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研究内容

機能性酸化物ナノ結晶の精密合成プロセス開発

ナノ材料のユニークな特性を十分に発揮させるためには、サイズだけでなく、形態、結晶構造、欠陥構造等を精密に制御する必要があります。我々は、酸化物の水熱合成において、水溶性金属錯体を原料として用いるとともに、キャッピング剤として、反応場に有機分子を共存させることによって、水溶液中に凝集体を形成することなく分散可能な種々の酸化物ナノ結晶の合成に成功しました。ナノ結晶は3~10 nmと微細であり、可視光の散乱が極めて少なく、得られたナノ結晶分散水溶液は高い透明性を示します(図1)。
有機分子はナノ結晶表面に特異的にキャピングし、例えばZrO2ナノ粒子において通常では得られない単斜晶相が形成されることを見出しました(図2)。また、SnO2においては、キューブ状のナノ結晶の合成に成功しました(図3)。

図1 様々な酸化物ナノ結晶分散水溶液の外観
図2 単斜晶および正方晶ZrO2ナノ結晶の選択成長
図3 SnO2ナノキューブの透過電子顕微鏡像

ナノコンポジット材料の精密合成プロセス開発

ナノ結晶はそれ自身、優れた特性を示しますが、異種材料と複合化することによって、飛躍的な特性の向上が期待できます。しかしながら、ナノ結晶は凝集性が強く、機械的な方法で異種材料と混合しても、精密に複合化することは困難です。我々は、水溶液中に分散したナノ結晶を異種材料の核生成サイトとして用いることにより、均一な構造を有するナノ複合体の作製に成功しています。

図4 NiO/Gd0.2Ce0.8O1.9ナノコンポジット

高性能固体酸化物燃料電池の開発

固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、イオン伝導性セラミックスを電解質とする燃料電池であり、600~1000ºCといった高温で作動するため、電極に白金等の貴金属を用いる必要がなく、多様な燃料が内部改質によって利用可能であり、また、後段にガスタービンや蒸気タービンを組み合わせることが可能であるため、他の燃料電池と比べて高効率の発電が可能です。
SOFCの普及において解決すべき課題の一つとして、優れた発電性能と耐久性の両立が挙げられます。これらは、電極の微細構造に強く依存します。我々は、電極をナノコンポジット化することにより、反応場の増大による発電性能の向上と、異種材料の介在による粒成長抑制効果による耐久性向上の両立を実現しています。また、さらなる特性と耐久性の向上を目指して、微構造と特性との因果関係の詳細な評価を行っています。

図5 SOFCの外観とナノコンポジット電極の微細構造
図6 ナノコンポジット電極を有するSOFC単セルの発電性能とカソード電極の耐久性